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あの人と、気仙沼のこと。 | 【テスト】気仙沼の観光情報サイト|気仙沼さ来てけらいん

俳優 小野寺ずるさんにお聞きしました。

あの人と、気仙沼のこと。

未分類 2025/01/11

今年1月17日に全国で公開される映画「サンセット・サンライズ」では、方言指導として奮闘された小野寺ずるさん。ずるさんは気仙沼市出身で、ご実家は地元だけでなく全国にファンの多い"塩辛"をつくる「小野万」。現在は役者業、ライター業、漫画業、舞台の脚本や演出と、活躍の幅を広げています。

今回は、そんなずるさんに気仙沼を巡ってもらいながら、地元への想いや今後の展望、サンセット・サンライズの撮影の裏側についてお聞きしました。

気仙沼出身だから今の自分がいる

私にとって気仙沼は、人格形成のすべてだと思っています。漫画を描いたり、演出、脚本など、いろんな創作をしているとき、常に気仙沼の記憶が景色として根底にべったりとあって。海とか、田んぼとか、下校時間の街灯とか。創作の根底にあるのは、いつも気仙沼の原風景。気仙沼の全部が私を作っていると感じています。
気仙沼出身だからこそいただけた仕事もあって。小さい頃から、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らしていたからこそ、今、方言指導ができているなって。方言がキツすぎて聞き取れないと言われることもあるんですが(笑)

 

負い目を感じていた20代

謙遜とかではなく、自分はほんとに役者に向いていないと思っていて。
もともとドラムと歌をやっていて、人前には立ちたかったんです。でもすごく頑張ったけど音楽のセンスがなかった。それでも人前に立ちたかったので、だったら舞台の役者をやれば良い、ってなんとなく役者を始めてしまいました。

東日本大震災が起きたとき、私は大学生で、就職とか大学卒業した後のことを考えなければいけない時期で。実家も震災で大変なことになっていたし、本当だったら自分も稼いで助けたりしないといけないけど、就活したけど何も思うようにいかず…。で、夢とか志がないまま逃げるように「今が面白ければ良い」みたいに舞台を続けてしまったんです。そうやって自分の猶予を引き伸ばすためにやってきたのが役者なので、「自分は恥ずかしい人間、ダサいんだぞ」というのを意識して、忘れないようにはしています。

負い目を感じていた20代

そんな感じだったので、20代の頃は、気仙沼に帰ってくると「みんなは震災を乗り越えて頑張っているのに、自分は何の役にも立てていない」ってコンプレックスで、勝手に溝を感じていました。

でも28歳のときに、「これ、すごい嫌だ」って心底情けなくなって。誰かの役に立ちたいなら、まずは自分が舞台や表現を逃げ場にして依存している状態から自立しないといけないと思ったんです。それで「ZURULABO」という全部自分の責任で創る活動を始めました。そこで書くこと、脚本とかも始めて。漫画も、ネットに上げれば気仙沼の人も読めるので、みんなが読んで、くすっと笑ってくれたらいいなと思って続けています。気仙沼への後ろめたい気持ちを払拭したいっていうのが、ZURULABOを立ち上げた動機です。そこからは少し前向きになりました。

映画「サンセット・サンライズ」に携わって生まれた変化

サンセット・サンライズに関われたのは、私の人生ですごく大きな出来事でした。上京してから初めて、丸々1か月気仙沼にいて、撮影中は実家から通いました。私は震災以降“自分は恥ずかしいハンパ者”みたいな気持ちで家族とも接してきてしまったけど、家族は単純に「会えて嬉しい」って喜んで、仕事も応援してくれて…家族の優しさと尊さに気づきました。あと本作が移住エンターテインメントだったというのも大きかった。「あ、自分の副業は書き物だし、こっちで出来るじゃん」って作品によって気づかされたんです。それでまとめて1週間いれるようなときは気仙沼に来ようと思って。そこから月一で帰ってくるようになりました。

今更だけど、これまでが本当にもったいなかったなって。家族と過ごせて、美味しいものも食べられて、自分の原風景も見れて。震災で変わってしまった景色もあるとはいえ、その変化も含めて自分の原点を近くに感じられる生活っていうのは面白いなって思います。

サンセット

創作や役者業を都会でずっとやっていると価値観が偏ってくると感じます。この偏った特殊な世界で、ずっと歯車のように続けていくのは、表現も狭くなってしまうという危機感がありました。だから家族と関わったり、地元の文化、生活を肌で感じて社会的に少しでもフラットにいたいなと、サンセット・サンライズの撮影以降、3分の1を気仙沼で過ごすようになりました。

みんなが真剣に向き合った「方言」

方言指導のオファーを受けたときは、ただただ不安でした。がっつり1本担当するのは今回が初めてで。まず台本をもらって読んで、監督・演出部との打ち合わせから入りました。気仙沼がメインロケ地ではあるものの、宇田濱という架空の町設定なので、方言のネイティブさ、リアリティの追求よりも役者さんのお芝居を優先することを軸にしようとなって。
そこから、各キャラクターごとにどこまで方言を強くするかを決めていきました。例えばヒロインの「百香」は役所に勤めているから、役所にいるときは標準語にしましょうとか。このシーンは仕事中だけど焦っているから、ちょっとなまらせた方がいいよねとか。そこの共通認識がとれたうえで、録音に入りました。

撮影の際は、役者さんのお芝居を優先するっていう決まりごとをしたのに、結局私は想いが強すぎて神経質になってしまって(笑)
気仙沼のみんなが観るんだって思うとやっぱりプレッシャーを感じちゃったし、あとは本作では登場人物の「百香」が被災している役というのもあって。実際に被災した方が観たとき、コメディ作品ではあっても方言があまりにも下手だと、観ていて冷めるよなって。適当な想いで役者さんが演技しているんだなって思われるのは嫌だなって考えたら、すごく怖くなりました。

みんなが真剣に向き合ってくれた「方言」

最初、百香は出番が多いので、全国の人が聞き取れるよう、基本は“なまらない方向”でいこう、と話していたんです。でも百香を演じた井上真央さんは本当にまじめな方で。「そうだとしても、私は方言を一回全部やって、練習してから標準語にしたい。地元でずっと生きてきたっていう設定なんだから、やるからには、そこをちゃんとしたい」って。標準語で良いシーンも「ちょっとイントネーションを入れたい」とか、役場のシーンでも「語尾だけでもなまらせたい」と繊細に取り組まれていました。“なんだべ”とか“おだずなよ”みたいな方言は逆に簡単で、標準語の字面なのにちょっとニュアンスが入るっていうのが一番難しいと思うんです。ここは私も頑張ったところですし、井上さんはここにチャレンジされていたなって思います。

今回の役者さんたちは皆さんすごく前のめりで、竹原ピストルさんは特に、長いセリフもあってものすごく練習されていました。
三宅健さんは、地元のエキストラの方たちに話しかけて、いろんな気仙沼を吸収しようとしていたし、方言も「これあってる?」って自分から聞きに来たりされていて…。録音も、自分の役のセリフだけでなく、もう1バージョン、そこにいる全員のセリフが入っているのも欲しいとか。私は皆さんがそんな想いで挑んでくれているのが嬉しかったし、撮影の日を追うごとに、皆さん自然な感じになっているなって感動していました。

撮影の最後のほうは方言が上手くなっていて、こちらから言うことが無くなっていて。リハーサルの時点で、あれ?って思うところがあっても、皆さん自分で分かっていて、本番には修正されていたり、アドリブの合いの手も、自然に「んだべ!んだべ!」って。休憩時間も皆さんなまっていて、本当にすごいと思いました。震災でつらい想いをした人たちも観る、というプレッシャーがあったから、皆さんものすごく真剣に向き合っていたし、ものすごく練習していたんだなって思います。とにかく皆さんピュアで、人が良くて、前のめりで、スターでした。

現場で印象的だったこと

印象的だったこと

キャストの皆さんが真摯だったことと、大先輩の中村雅俊さんが現場の空気を良くしてくれていたことが印象的でした。突然、「虫だー!」とか言って捕まえたり(笑)。 みんながピリピリしていたとしても、そのおおらかさで現場をほぐしてくださるような方でした。
それから井上さんは、私が今回まるっと方言指導をするのが初めてで、すごく緊張していたのを分かっていて、シーンが終わる度に私のところに「大丈夫だった?」って話しかけに来てくれました。三宅さんもそうですけど、指摘しやすい環境を作ってくれていたのに気づいて、本当に尊敬しました。
ピストルさんはすごい集中力で、周りの熱量を上げてくれていましたし、好井まさおさんは芸人さんだからか、自分が現場でどう振る舞うのがみんなのメリットになるのかをきっと分かってらっしゃって、和ませてくださいました。三宅さんとずっとじゃれてました(笑)。劇中だけでなく、モモちゃんの幸せを祈る会のメンバー(三宅、竹原、好井、山本)は休憩中も男子校みたいな感じでした。山本浩司さんも内心は絶対プレッシャーを感じているはずなのに、それを表に出さず、穏やかで落ち着いていて、人柄の良さを感じました。大好きな俳優さんです。菅田さんは、本当に頭の良い人なんだな、と感じました。本当のプロ。
俳優の皆さん全員のお名前を挙げたいくらい、皆さんがそれぞれ素晴らしかったです。

目標は演出家

2022年夏に舞台の脚本と演出をはじめました。それは自分で企画して出資も自分なので、ほぼトントンか赤。でも役者業だけをずっとやっているとすり減っていく感じというか。もちろんいろんな経験ができてありがたいんですけど、なんかちょっとずつ削れてる感じがして。自分で創るっていうことをしていった方が役者業にも活きるなってやっています。演出もするので、そうすると役者業へのフィードバックにもなります。
目標は演出家になることです。舞台は下火だから稼ぐのは難しいかもしれないけど、続けていきたいですね。稽古場が大好きで、常に稽古場にいて人のお芝居を見ていたい。
稽古場で、役者さんの「おはようございます」って入ってきたときの雰囲気とか、稽古中の態度とかを見るのが好きです。今この人不満に思ってるんだろうな、それでお芝居するとこうなるんだなとか。心に影響されてる体を見てるとワクワクします。人が素敵になっていく過程の中にいると感動しますし、変化を見ていくのが好きなんだと思います。

あと、いつか気仙沼で演劇のワークショップをやってみたいという目標もあります。「えんぶ」という舞台専門誌で私は連載をしているのですが、前々回の連載では、演劇教育に取り組んでいる方を取材して、いつか気仙沼でも演劇のワークショップをやってほしいというお話をしました。
子供たち向けに、詩の朗読会とかも、いつかできるんじゃないかなって思っています。

ちなみに1月9日発売号では宮城県出身のカメラマン・小岩井ハナさんを取り上げています。『サンセット・サンライズ』のことにも触れていて、全国の書店、ネットで販売されているほか、気仙沼図書館にも寄贈しているので、ぜひみなさんに読んでいただきたいです。
なんだか、ちょっとずつ私の活動が気仙沼に近づいているように感じています。

気仙沼のおすすめ

大谷海岸は私にとって思い出の地で、おすすめです。落ち込むことがあると、母が連れて行ってくれて、ぼーっと海を見て。励ましの声をかけてくれました。自分にとって、死ぬまで大切な場所です。今は落ち込むこともあんまりないので、「大谷でソフトクリーム食うべし」って言って、1個を半分こしながら、最近の仕事のことをしゃべったり。

道の駅大谷海岸

震災があって、あのあたりも形が変わったけれど、海は変わっていないというか。波の強さとか、砂浜の色とか。空気から感じる皮膚感だったり、嗅覚だったり。気仙沼にいると五感が刺激されるなって。長く東京にいたのもあって、最近改めて、気仙沼っておもしろいなって思います。

映画を観られる方へ

映画を観られた方には、ぜひ1週間くらい気仙沼に滞在してほしいです。もちろん美味しい食べ物もあるし、海もあって、観光地としても気仙沼っていいところだと思うけど、映画では「生きるのはキリキリせわせわすることじゃない」っていうのも伝えている気がして。それを踏襲した感じで過ごすために気仙沼を訪れてほしいなって。聖地巡礼もいいし、レンタカーとかでゆっくり回って、ダラ~っと海を見たり。短い半移住みたいなのを体験してほしいなって思います。

おすすめ

小野寺ずるさんプロフィール
1989年5月17日生まれ、気仙沼市出身。幼少期を気仙沼で過ごし、大学進学で上京。現在は俳優、ライター、漫画家、舞台の脚本・演出など、活躍の場を広げている。NHK大河ドラマ『西郷どん』『どうする家康』『光る君へ』、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』など、数々のテレビドラマ、映画、舞台にも出演。
オフィシャルサイト: https://zurulabo.oops.jp/
X(旧Twitter):@zuruart
所属事務所:https://blue-label.jp/management/zuru-onodera/

パブメイン写真

サンセット・サンライズ
『サンセット・サンライズ』
公開:1月17日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
コピーライト:Ⓒ楡周平/講談社 Ⓒ2024「サンセット・サンライズ」製作委員会

映画に関する展示などロケ地でのお楽しみ企画を計画しております。
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